20th Campus Genius Award
第20回学生CGコンテスト
ノミネートnominate

この粘土のかたまりを、人間だと認識するまでに少し時間がかかる。生活している様子を追っていくうちに、「人間に見えなくもない」くらいの感じにはなる。部屋の中を移動する様子は、かなり奇妙である。スルスルと滑っていて床を踏んで歩いていない。周りにある背景と全く馴染んでいない。主人公はこの世界の違和感として描かれているようだ。なんとか世界に順応しようとして生きているようにも見える。忙しなく落ち着かない世界に翻弄される自分という存在。最後にたどり着いた草原では、この主人公は草をつかみ大地を張って実態を持って動き出す。存在するということを強く感じさせる場面だ。その主人公の姿は抽象的で、もはや人型になることもない粘土のかたまりなのだが、もはや粘土だという事を忘れ、それを自分なんだと感じていた。 (水江未来) 揺れ流れていたなんでもない点と線が、 吐き捨てたガムのような肌色の塊となった。 徹底した自己否定の末、 蟻一匹が運んでくれる生の恍惚。 −− 他者という救い。 (馬 定延) 床や壁などのテクスチャの独特な処理と、あまりに不定形なキャラクターの造形による視覚効果が衝撃的。とんでもなく巨大なスケールの空間での出来事のようにも見えるし、顕微鏡レベルでの出来事のようにも見える。また重力方向も一定ではなく、上に向かっているのか、下に向かっているのか、どこに向かっているのか分からない。こんなにも具体的かつダイナミックにアニメートされているのに、観る側には主人公がとにかくここではないどこかへと向かおうとしていることだけしか分からないというこの非効率さは、ほとんど発明に近いと思う。そういう発明が細かいところにも満ち溢れていて、とくにコートを着るシーンなどは何度観ても飽きない。 それでいて結局のところ、この主人公が人間を擬したり、抽象化したものなのかどうかもよく分からないのも良い。目覚まし時計で起きるけど、洗面台で身体の一部を洗うけど、出かけるときにはコートを着るけど、たぶん人間じゃないんだと思う。ほかの何かと交じり合ってしまうくらいの不定形さも、彼の心象とか彼が属する社会そのものの表れとかでじゃなくて、とにかくこういうものなんだと思う。彼らが人間とは別に、こういうかたちで普通に暮らしているんだと信じられるし、彼らの存在を素直に肯定できる。 (渡邉朋也)