CAMPUS GENIUS AWARD SILVER

受賞作品

母よ、アニメを見よう

映像

阿部 舜(作者/代表者)

東京藝術大学大学院

審査員・評価員コメント

今年の審査員賞(個人賞)は、ドキュメンタリー作品に決めました。こういう形でしか、気恥ずかしさを越えて、母と素直にコミュニケーションを取れない息子の姿は、滑稽であり愛おしくもあります。母の方は、息子の作品制作(母からしたらゴッコ遊び)に付き合う中で、息子との関係性に特に変化が起こる訳ではありません。母と息子というのは、間にアニメを挟まなくても、作品制作という理由を作らなくても、一緒に山に登るという儀式をしなくても、今も昔もこれからも何も変わらない、揺るぎない関係なんだと気づかせてくれます。それは母の愛ですよね。母は偉大なんだな!と教えられる愛おしい作品でした!

水江 未来


タイトルが与える印象とは異なり、この作品において、アニメはほとんどダシに使われている程度のものである。この作品を駆動させるのは、母親からの愛を引き出したい気持ちであり、(アニメを好きなことも含めて)自分のことを受け入れてもらいたいという気持ちである。だが実際には、すでに母は作者のことを受け止めているし、愛も存分に引き出されている。この作品が作られるずっとずっとまえから。作者はただ、それに気づいていない(もしくは気づいていたとしても改めて確かめたい)だけなのだ。だからこの作品に写っているのは、作者と母親のあいだの関係性の、そのままの継続である。でも、あの終盤の朝日のシーン、光がすべてを照らすとき、その「そのまま」の関係性もまた、新たな光のもとに照らされる。これは普通の陳腐な母と子の物語である。でも、そのことはそのままにおいて、どうにも感動的なものだ。このラストでは親子二人は言葉にせずともそのことに気づいている気がして、とても良い。作品を作ることがもたらしうる最も美しいものを見た気がする。

土居 伸彰


この作品には「アニメ」と呼ばれる謎の生命体の他に、主人公とその母親が主要なキャストとして登場するが、母親が物語が展開するに連れて、フィクションに参加することを放棄していくため、徐々にフィクションとしての構造が揺らいでいく。しかし、それでも主人公はこの世界の中でひとり、頑ななまでにフィクションを放棄しない。その姿勢がどれくらい強固なのかが見て取れるのがプロジェクターの存在で、当初はそれなりにその存在が隠蔽されていたが、後半になると全く隠蔽されないどころか、生命体だと思われていたものが、プロジェクターから投射された単なる映像でしかないことが完全に露呈する。しかし、そんなことは主人公は気にしない。本当に気にしていなかったから、あれはプロジェクターじゃなったのかもしれない。見るものにプロジェクターをプロジェクターとして感じさせないほどの強固なフィクションが主人公にまとわりついている。それがまず凄い。そして、クライマックス。母親がカメラマンを務めるこのシーンで、アニメは朝焼けに照らし出されて、消える。主人公の唯一の拠り所だったアニメが消えたことで、主人公が気合で保っていたこの作品のフィクション性は崩壊寸前のところまで追いやられる。絶望的なまでの孤立が浮かび上がるのかと思った刹那、画面に溢れだしたのは、カメラの裏側から滲み出た包み込むような母の優しさ、親子の絆。それだけが最後に残った、それだけがはじめからあったということなのだろうか。素朴に胸を打たれてしまった。冒頭のシーンとのギャップが凄い。

渡邉 朋也