CAMPUS GENIUS AWARD SILVER

受賞作品

きつね憑き

アニメーション

佐藤 美代(作者/代表者)

東京藝術大学大学院

審査員・評価員コメント

新美南吉の晩年の作品「狐」をもとに主人公の少年ぶんろく視点の物語として制作された作品。ガラスに絵具や砂で描き出されたコマはどこをとっても絵本の1ページとして存在しうる味を持ち、正に絵本が動くとはこういうことだと唸らされる。古い迷信を聞いてしまったことで、もしも自分が狐になってしまったらと妄想するぶんろくの心の揺れ動きを軸に母の愛情が交差する。幼少期に誰しもが体験するであろう不安とそれを包み込む親の愛情。原作に独自の光をあて、普段は忘れがちなあのころの気持ちを思い起こさせてくれる意欲作。

豊嶋 勇作


きつねに憑かれる話を聞いた少年が不安になり、母に話しをする。母は少年(息子)が憑かれてしまったときにどうするかを話す。ガラス板の上に描かれる絵の具や砂が奥行きのある表現として独特の世界観生み、イメージを描きおこしている。子を思う母の愛情が雪景色とともに覆うように描かれおり美しい。普遍的なテーマをしっかりと捉えていて、子供に見てもらいたい、残しておきたい作品だと感じた。声を演じている役者の演技も素晴らしく引き込まれました。

堀口 広太郎


シームレス且つ独特なシーントランジションが非常に秀逸で、気持ちを切らさず、グッと物語に引き込まされるパワーがあった。砂絵の使い方が印象的で、グラスオンペイントのはっきりとした色合いを対比になり、物語の合間に見せる抽象世界がうまく表現できていた。物語の終盤は一番心揺さぶられる部分なはずだが、エンディングに向けての流れに、心揺さぶられるパワーが少し欠けていたかのように思う。それでもこの作風は、作者の強烈なアイデンティティとしてすでに確立されている。

柳 太漢


この作品が観客の脳裏に残す記憶は、作品そのもののビジュアルイメージというよりは、そのビジュアルイメージがイタコのように憑依させ、観客へと投げかけてくる巨大で認識不可能な世界の「影」の訪れのような印象である。世界は私たちの理解している範囲では終わらないという事実の訪れであり、未知の何かが常に近づきつつあること、影としてしか認識できないようなものである。その意味において、この作品は(手法の選択ゆえではなく)、キャロライン・リーフがアニメーションにおいて成し遂げたものを、この時代に蘇らせる。それはつまり、決して認識できない「闇」の世界に気づき、怯える気持ちを持つということである。

土居 伸彰


画面内に描かれた空間に、ぼんやりと境界があいまいなままクローズアップのカットがカットインされたり、あるいはシーンの切り替わりがじわじわと行われる過程で異なる時空間の出来事が画面内に共存したりと、時空が歪められては、正されということが頻繁に繰り返されている。それが砂絵やグラスオンペイントといったこの作品を構成する手法によって不可避的に引き起こされるのかどうかはよく分からないが、一見すると不自然にも映りかねないその演出が、昔話、それも内部で回想があるという脚本に非常にマッチしており、昔話を聞いているときのようななんとも言えないあの感覚を喚起させることに成功していると思う。

渡邉 朋也